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地球温暖化・国産材の問題とエスウッド

NPO国産材の会報発行を担当してくれている「ゆずりは」さん(珍しいお名前で漢字表記ができなくてすみません)から、NPO役員の一員として、会報2号の挨拶文を書いて欲しいとの依頼を受けて、原稿を書いてみました。ところが、字数の制限を大幅に超えてしまい、とてもそのまま採用してもらえそうもありません。いずれカットされるのは目にみえていますので(笑)、ブログにて先行発表することにし、タイトルを「地球温暖化・国産材の問題とエスウッド」とつけました。
「ゆずりは」さん、榎戸理事長さん、岡本事務局長さん、事後報告ですみませんが、よろしくお願いします。そんなわけで、今回は画像がありませんが、悪しからず。  (角田 記)

間伐材の新しい用途開発をめざして、桧ストランドボードの製造・販売への取り組みをはじめてから10年になります。この間に、時代は大きく変わってきました。地球温暖化問題に対する人々の心配が著しく増大するにつれて、最も重要な持続可能資源であるとともに、CO2の吸収・固定化に大きな役割を果たしている森林資源への関心も高まっており、それを通じて、国産材を活用することの意義も、広く認識されるようになってきました。

とはいえ、現実の方は、大きく立ち後れています。先頃、木材自給率が25%に達したと報じられましたが(過去最低の自給率は18%)、その裏側には、再植林なき人工林伐採の増大という深刻な事態が貼り付いています。

又、日本政府は、この6月に、2020年までの温室効果ガス排出削減の中期目標を「2005年比15%減」とすることを発表しましたが、これを、京都議定書の基準年である1990年比に直すと僅か8%の削減でしかありません。30年間で8%の削減目標! これで、2050年までの「先進国」の目標である80?95%削減(IPCC第4次評価報告書)をどうやって達成できるというのでしょうか?

言葉(認識)=建前、と実践=現実、とのこうした驚くべきギャップが意味するものは何か?

あくまでも私見ですが、

?、日本国・日本社会全体が傾向として、人類(自然の一部としての)のあるべき姿に対して鈍感で、正面から向き合うことを回避していること、

?、同様に傾向として、想像力に欠け、現状の維持・追認に終始し、「低炭素社会」を遙かに超えて「成長なき社会」へとパラダイム転換するという必然性に無自覚で、かつそのためのエネルギーも持ち合わせていないこと、

が思い浮かびます。

しかしながら、このギャップは乗り越え不可能ではありません。多様なフィールドにおける様々な「変革」への力の総和がある量的な閾値に達したとき、社会のベクトルは劇的な質的転換を遂げるでしょう。

間伐材を活用すべく、魅力的で価値あるエコマテリアルの創造をめざした私達のエスウッドプロジェクトは、当初、無垢の木材を重視する立場からは、「間伐材をわざわざチップにして、又ボードにする技術に意味があるのか?」と評価され、他方、合板・パーチクルボード・MDFなど既成木質材料の立場からは、「そんな高い木質ボードを誰が買ってくれるのか?」と評価されることがしばしばでした。

10年を経た今、その評価は微妙に変わってきているように感じられます。というのも、「エスウッドって、木材らしい色・香り・暖かさがあって、サイズの自由度が高く、寸法も安定している珍しい面状の木質材料だよね。」とプラスの面を評価していただける機会が多くなってきたからです。

そして、こうした変化の増大が、エスウッドプロジェクトを、「先行投資」という段階から、「持続可能事業」という新段階へと飛躍させてくれるか否か、その回答が得られるのは、それほど先のことではないものと思われます。