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徒歩旅行1

 その昔、夏休みを利用して中国地方の日本海側、山口県萩市から島根県松江市まで280Kmの距離を歩いて旅行したことがあります。

 歩くことが目的の旅行のため、秋芳洞や萩市の名所、旧跡などにもまったく寄らず、真夏の炎天下の道をゴール目指して歩き続けました。

 1日平均40Kmを歩くわけですが、40Kmは新幹線ならば15分とかからずに着く距離です。ところが自分の足で歩くと、時速5Kmで計算しても8時間、食事や休憩時間を入れると10時間はかかり、朝8時に出発しても目的地に着くのは夕方6時になります。

 ナップサックひとつ担いで、萩市から最初の目的地須佐町を目指して出発しました。

 歩いてみるとよく分かるのですが、車や電車で通ったのでは分からない、山の形、田んぼのあぜ道、路地や民家などの風景が強く、強く記憶されます。

 出発から1時間ほどして、駄菓子屋さんの前で最初の休憩をしていると、頭にヘルメットをかぶり、大きなリュックを背負った大学生と思われる二人組みが通り過ぎていきました。この二人組みとはそれ以後、追い越したり、追い越されたりしたのですが、声をかけてみると彼らも歩いて旅行しているとのことで、何と同じ日に同じ場所から出発していたのでした。違っていたのは目的地で、彼らは「青森まで歩いていきます!」と言っていました。

 4時ごろだったか、最後に彼らを見たのは、山陰本線の無人駅に座り込んで電車を待っている姿でした。ギブアップするのが早すぎです。手を振ったら、力なく振り返していました。

 道は山越えになりました。山を越えれば須佐の町に着きますが、1時間以上登っても下りにはならず、地図には簡単にグニャグニャと道が記されてますがとんでもない山道で、ようやく下りになっても中々町が見えず、次のカーブを超えれば町が見えるかと期待すると、また山が現れるということを繰り返して、最初の目的地の須佐にたどり着いたのでした。

 結局、山を越えるのに3時間ほど歩きましたが、途中に一軒の民家も無く、店も自販機も無いので水分補給が出来ず、全行程中の一番の難所でした。