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木材利用拡大大会in京都その2:木材利用ポイント制度のジレンマ

大会2番目の講演は、ウッドマイルズ研究会代表世話人の藤原敬さんによる「木材利用拡大施策の新しい展開とウッドマイルズ」です。ここでは、本年2月の補正予算に盛り込まれた「木材利用ポイント制度」が話題になりました。 (下の画像は講演中の藤原さんです。)

「木材利用ポイント制度」は、地域材の需要喚起のため、地域材を活用した木材住宅、木製品等についてポイントを付与し、地域の農林水産物等との交換ができるようにする、という時限措置です。
総額420億円のうち、仮に200億円が地域材を活用した木造住宅建設の支援に配分されるとすると、1戸あたり20万円分(20万ポイント)として、10万戸分の施主に、他の住宅取得者には得られない恩典が与えられることになります。
制度運用の詳細はまだ明らかになっていませんが、この措置は地域材(おおむね国産材)関連業界にとっては、まことに大きな支援策といえるでしょう。

けれども喜んでばかりはいられない、というのが藤原さんの指摘でした。問題は、ポイント付与対象製品にに使用される地域材の認定基準にあります。
これについて、「運営業務の概要」にはこう記されています。
    ①都道府県により産地が証明される制度又はこれと同程度の内容を有する制度により認証さ     れる木材・木製品
    ②森林経営の持続性や環境保全への配慮などについて、民間の第3者機関により認証された
     森林から産出される木材・木製品
    ③「木材・木材製品の合法性、持続可能性の証明のためのガイドライン」(平成18年2月・林野     庁)に基づき合法性が証明される木材・木製品

これによれば、国産材・輸入材を問わず、信頼できる被証明性(トレーサビリティー)を有することが認定の基準とされています。項目①、②の基準についても、100%信頼できるとは言い難いと思われますが、中でも項目③の「合法木材」についてはいえば、制度運用の現状は、とても信頼性が高いといえるレベルではないと思われます。この問題は、折角の木材利用拡大施策につきまとう影であり、制度の公平性に対する納税者の疑念を引き起こす可能性は否定できないと思われます。

藤原敬さんは、林業・木材業の分野に「合法木材」というカテゴリーを定着させるために尽力されてきた第1人者であるだけに、誰よりもこのジレンマを痛感されておられることでしょう。さらにいえば、木材の循環的利用という大義が現実に近づけば近づくほど、皮肉にもこうしたジレンマがいっそうクローズアップされることになるのは避けられそうにありません。
その意味で、森林・林業の再生を通じて循環型社会に向かおうとするムーブメントが、今、新しい次のステップに飛躍するための産みの苦しみの渦中にあるのではないか、と強く感じたのでした。
                            
                                                   (角田 記)
  * なお、藤原さん自身による大会報告は以下にアップされています。
    
   「持続可能な森林経営のための勉強部屋」163号
    http://homepage2.nifty.com/fujiwara_studyroom/